遺留分請求と価額弁償

ここ数年来、遺留分請求事件を担当することが多くなってきました。

その背景には、遺言書の作成、特に公正証書遺言の増加があります。
遺言書を作るからには、法定相続とは異なった内容にすることにポイントがあるでしょう。勿論遺留分を侵害する内容であっても遺言書自体は有効なものとなります。遺留分減殺請求権を行使するか否かは、遺留分権利者の権利であり、決して義務でもありません。
自分の財産はどう処分しても自由という遺言者の意思と、この財産をたよりにしている相続人の生活の保護との調和の中に遺留分制度はあります。
遺言者の意思を尊重すると遺留分が法律上存在することは分かっていてもどうしても納得できないとの気持ちがあり、これに対して遺留分権利者の立場からは法律上の当然の権利の行使という気持ちがあります。この両者の間には、どうしても本音として理解できないとの気持ちが感情的対立としてあらわれ、価額弁償をめぐっても争いが長期化することも多くあります。
弁護士として私達が、そのいずれの立場に立つにせよ、亡くなられた遺言者の遺志に思いを馳せつつ、法律が認めた遺留分制度の意味を各事案ごとに考えつつ、何が公平なのかを自問自答しつつ執務しています。