おくのほそ道


 松尾芭蕉の「おくのほそ道」(角川ソフィア文庫)を読みました。あまりに有名な著書で、俳聖芭蕉聖典の一つとされています。
 一読して、意外と俳句の数が少ないと思いました。それだけ芭蕉の「旅にあって苦吟する修行の句」が多くを占め、推敲を重ねた跡も見受けられます。
 それにしても出来上がった俳句の数々が珠玉の句であり、一気に読むことができました。
 その中でも特に印象に残った三句を記してみました。
1、夏草や兵どもが夢の跡
 ドナルド・キーンの英訳によれば、The summer grasses Of brave soldiers' dreams The aftermath
夢は、芭蕉の辞世の句にも出てくる重要なキイワードでしょうか。
2、五月雨の降り残してや光堂
 初案は、「五月雨や年々降りて五百たび」であったようです。
 光堂は、藤原家三代の棺が納められていました。
3、早稲の香や分け入る右は有磯海(ありそうみ)
 私の故郷、越中路での俳句です。
 担籠(たご、現在の富山県氷見市)の藤波は、万葉集に詠まれており、芭蕉も訪れたかったものと思われます。